ベルリン作業所見学~大都市で地域に根付くインクルーシブ社会の実現モデル
私がインターンシップに通っていた施設、Mosaikは、ベルリンにいくつも拠点を持ち、且つ様々なレベル、および種類の障害を持つ人に対応した大規模組織です。
作業所、通所施設などが根幹となっています。
私は普段は、重度障害のために作業が困難な人達が通う通所施設に通っていますが、
今日は同じ組織に運営されている軽度の障害の方が通う作業所の見学に行きました。
尚、今回写真が一枚もありません…
はじめはこの事ブログに書く予定が無くって、後から撮ればよかったーと後悔しました…!
その代わり、パンフレットいただいたので、その中身の写真を掲載します!
私が通う施設から大きな通りを挟んで少し離れた所にあったのですが、かなり大きな建物でした。
そのうちの1階、3階、4階がその組織の所有しているフロアです。
それ以外のフロアはベルリンのスタートアップ企業がいくつか入っているそうです。
普段はそれほど交流は無いそうですが、ちょくちょく製品を購入してくれたり、たまに何かを依頼してきてくれるそうです。
そこの作業所では、ドリルの部品、車の部品の組み立て・梱包、お菓子の生産などを行います。
ドリルや車の部品の作業はこんな感じ。
わたしは本当に工場みたいなところで黙々と殺伐と作業しているかと勝手に想像していたのですが、全くそんなことなく、皆さんのびのびと楽しそうに和やかに作業されていました。
想像以上に温かな場所でした。
ちなみにコンピューターでの出荷管理も利用者の方がされていました。
コンピューターの使い方を学んで仕事で実践できる場でもあるようです。
印象的だったのはクッキーの型。
ベルリンのテレビ塔、パリのエッフェル塔、ピサの斜塔などヨーロッパ各地の有名な建築物をモチーフにしたクッキーの型抜きでした。
カラフルで可愛らしくて飾っているだけでもとてもいい感じ。マジで欲しくなりました。お土産にも良さそう。
Mosaikのオンラインショップでは取り扱っていなかったけど、クッキー型を紹介しているウェブサイト見つけました。
First we take Berlin, then London and Paris - KeksTester
上記サイトより、これはブランデンブルク門。
クロイツベルクの施設だけでの限定みたい。
あと、ベルリンのテレビ塔をモチーフにした積み木もカラフルで可愛らしかった。
(これは見つからず。。。)
それだけでなく、アート活動も盛んです。
絵画、陶芸、キャンドル制作、など数多くの種類の作品を制作し、販売も行っています。
ピニャコラーダを作って他の会社に卸したり、ちょくちょくバザーに出店などもしているようです。
アトリエを見せていただきましたが、カラフルでエネルギッシュな作品でいっぱいで、見ているだけでワクワクするようなものばかりでした。
販売するもののデザインは利用者の方のアイディアを採用してそれに基づいてデザインされているそうです。
製品はここのオンラインショップで購入できます。
なんかこうして見ると、一流のブランドみたい!!
作業所内のカフェも、利用者の方が実際調理に当たっています。
また、別の部署では配食サービスも行っており、昼食の配食を必要とする施設の昼食もここでそこで調理され届けられています。
私の通う施設もその配食サービスを利用していました。
各施設の掃除も利用者の方が仕事として行います。
職員ってどこの職場でもめっぽう忙しいから、ハンディキャップのある方に給料の発生する仕事としてお任せするって、お互いに WIN- WINになれる良い機会だと思う。
ドイツらしく木工も!
農業もやってたり!
酪農もやってたり!
組織内で自給自足の流れがあるみたい。
これもいいなぁ。日本でもどこかの地域コミュニティで実践されている場所があったような記憶があります。詳細は忘れてしまったけど…
障害が軽めの人は作業所でのスケジュールに合わせて仕事に従事し、お給料をいただいてるそうですが、
そうでない方、例えば長時間集中して何かに取り組むのが難しい方、スケジュール通りに行動するのが難しい方、指示通りのタスクがこなせない方などは、別のセクションに在籍します。
そこはFördergruppeという、スタッフのケアや監督をより頻繁に必要とするグループです。
そこでも簡単な作業は行われますが、長時間の集中は難しいため休憩は比較的本人の意思通りに取れます。お給料も一応発生しますが、タスクをこなす量がやはり少ないため、やはりお給料もわずかだとのこと。
ちなみにドイツのシステムでは、障害の重さの度合いにより、行政から金銭的支援がなされるとのこと。
なのでお給料が少ないために生活が困難になるということはなく、本人の社会参加、やりがいの問題であると言えます。
どういうプロセスでそこで働くに至るか。それも仕組化されています。
まずそこに入ると決め、2年間の訓練期間に入ります。
その2年間を通じて、本人にどのような適性があるか、能力が作業に見合っているか、本人のやりたいことと刷り合わせができるか、など指導スタッフの見守りの元、本人の方向性を決めながらそこで働くための技術を身に付けます。
それを経て、どの生産部門で働くか振り分けが成されるとのことでした。
ちなみに他の組織の作業所で似たような事をすでにやっていたならその2年間のプロセスは必要ないそうですが、そうでなければその2年間のトレーニングは必ず必須だそうです。
その訓練セクションも見せていただきました。
5、6人ほどの利用者さん達とスタッフ1人、パソコンを覗いていたり、実際動かしたり、各々作業に取り組んでいました。
なんで自分たちのところにわざわざ興味を持ってきたんだと聞かれました。そりゃそうだよね、はるばる遠いアジアの国からわざわざこんなところに、と思うわな。私でも逆の立場なら思うよ。
軽く談笑して、可愛いらしいミニノートをプレゼントにいただきました。
今私が通っている施設は、その作業所と同じ系列の施設で作業が難しい人向けの通所施設なのですが、
人によってはその通所施設から作業所に移る可能性もあります。
通所施設での普段の様子を担当スタッフが報告書類にまとめ、それに基づいて人が選出されるそうです。
やはり障害の度合いからして、なかなか簡単なことではありませんが、場合によってはそれが障害の問題ではなく本人の自信の問題でもあるので、
通所施設になれて自信がついた利用者に少しずつ作業所慣れてもらい、うまくいけばそのまま作業所への移動につなげられるとのことです。
各セクションの繋がりのフローチャート
このシステムはすごくいいなと思いました。
本人の成長度合いに合わせて、支援の内容を変えることができる。
同じ組織内で一人の利用者をセクションを超えて継続的にサポートできているからこそ実現可能なのだなと思いました。
大きな組織で十分な敷地があり、様々なニーズに合わせたセクションがあり、且つ同じ組織内で継続したスタッフによるサポートがあるからこそ、です。
私が日本で務めていた施設は重度障害の方向けだったのですが、利用者の方の中には明らかに障害の度合いに見合っていない方もいました。軽めの障害で自立も可能なのに、本人の気持ちの問題でそれが難しくなっている人でした。
私たちは重度の方向けの生活介護の提供が中心だったのでできる事が限られており、一方でその軽度の方には本人にもっと見合った生活ができるはずなのに。。と私はモヤモヤした思いで接していました。
私たちの組織は横のつながりはあっても、縦の広がりは無い。
ひとつの施設に通いだすと、他に広げていくのが年々困難になっていきます。
年を経れば経るほど難しくなる。
だから、そうやって、本人の能力に合わせて様々な可能性を提供できるこの組織が羨ましくなりました。更に製品づくりを通じて地域の人とも繋がって、自立した地位を築くことができている。
もっとこういう施設が日本の大都市の中心にも存在すればいいのに、と思いました。
都市部から離れたところにはあると思います。でも、都市部から離れるという事は、言い方を変えると、障害を持つ人達を隔離しているという事にもなる。
ベルリンという大都市の中心で、あのような施設の運営がローカルレベルで実現している。日本でもそれは可能なはず。
ドイツでよく見かけるスーパー、EDEKAとも提携しているようです。
スーパーで働くハンディキャップのある方、日本ではほとんど見かけない。単純作業の多いスーパーでの仕事こそ、彼らを地域社会に巻き込んでいく良い機会だと思う。
私はこれからの未来、日本社会がもっとまぜこぜで、色んな事に寛容になる事を期待しています。
2018年現在の情勢では、全く逆の方に向かおうとしているように感じますが、一方で多くの人が気付き始めているのも感じます。
ベルリンという大都市に存在する、あのような温かで有機的な場所が、これから日本各地に根付いていくのを見守っていきたいと思います。
障害を持つ人達を巻き込んでいく事で、そこに関わる全ての人達がキラキラと輝く。
そんな場所がどんどん増えていく力になりたいと、今の私は思っています。
迷ったときは、このMosaikの在り方はきっと私の理想のモデルとして、これから大事な灯になっていくのでしょう。
沢山の人と、どんどんシェアしていきたいです。